着せ綿
着せ綿(被綿・きせわた)
煉切
中国から伝わった重陽節句ですが、
日本独自の風習として、菊の被綿があります。
これは重陽前夜、つまり9月8日の夜、
菊の花を真綿で覆って夜露と香りを移しとり、
翌朝、その綿で体や顔を拭うというものです。
そうすれば老いが去り、長寿を保つと信じられていました。
また近世になると、白菊には黄色い綿、
黄菊には赤い綿、赤菊には白い綿を使い、
色を変えた小さな綿で蕊(しべ)を作る、という風に、
色々と細かい決まりもできてきたようです。
しかし、旧暦の時代には盛んに行われていた被綿も、
新暦が採用されてからは、さすがに9月9日では、
菊の開花には早いでしょうし、夜露も降りないでしょう。
明治時代以降は次第に行われなくなり、
宮中も含めて、被綿の記録はあまり残ってないそうです。
今年の旧暦9月9日は、現在の暦でいうと10月22日。
実際の風習は忘れられても、季節感を大切にする和菓子の世界では、
これからもずっと受け継がれていく伝統の意匠です。

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