つばいもちひ(椿餅)
道明寺製
日本最古の餅菓子の一つです。
平安時代中期の長編小説、
「源氏物語」と「宇津保物語」にもその名は登場し、
現代的に言うと「つばきもち」ですが、
あえて古式にのっとった菓名にしました。
ただし当時のつばいもちひは、炒り米を粉にして餅を作り、
甘葛(あまずら)という、つる草からとった甘味料をかけ、
椿の葉二枚ではさんだものだったそうです。
また1761年の菓子文献「古今名物御前菓子図式」では、
「干し飯を狐色に炒り、粉にしたものに砂糖と肉桂粉を湿り気を入れて揉み合わせ、
蒸してから臼で搗き、椿の葉二枚ではさむ」とあります。
そして、曲折を経て現代では、道明寺に餡を包み、
椿の葉ではさんだものが主流となっています。
当店では、各時代に敬意を払い、
肉桂粉で色と香りをつけた道明寺で餡を包み、
反らないように先を少し切った椿の葉ではさみました。
色づけた道明寺が椿の花をも連想させ、
艶やかな葉の緑との対比が心に残る、春のお菓子です。