花びら餅(はなびらもち)
求肥製
別名「菱葩(ひしはなびら)」ともいわれ、
初釜、つまり新年初のお茶会や、お稽古始めに欠かせないお菓子です。
お客様にもよく尋ねられる、成り立ちや由来は、
様々なところで、それぞれもっともらしく語られていますが、
俗説や、後からのこじつけも多く、概ね次の通りだと思われます。
平安時代以降、宮中の年中行事で、「お歯固め」という正月儀式がありました。
「歯」は「齢」のことで、長寿を願って正月三が日に、
猪・鹿・押し鮎(鮎の塩漬け)・大根・瓜などを食べたそうです。
室町時代以降、鏡餅も使われるようになり、これが変化していきました。
当時の儀式に使われた餅は、円くのばした白餅に紅い菱餅をのせ、
その上に押し鮎や味噌をのせていたということです。
俗に宮中雑煮(ぞうに)とも包み雑煮とも呼ばれ、
御所言葉で「やきがちん」といわれました。
お年賀に宮中を訪れた公家が賜って、火にあぶって食べたからだそうです。
で、この押し鮎やイワシの干物が、牛蒡(ごぼう)に変わっていったらしく、
宮中行事の正月供物として、現在でも使われているとの事です。
これを、裏千家十一世玄々斎が、禁裏より許されて初釜に起用したのが、
お菓子としての、花びら餅の始まりのようです。
当店では、円くのばした求肥と、
味噌餡・蜜漬け牛蒡・紅羊羹を使って仕上げていますが、
製法や材料もお店によって多様です。
求肥餅を、のばしてから円く型抜く、つまり切り抜くお店もありますし、
牛蒡が1本ではなく、古式通り2本だったり、
ほんのり透ける紅色も、
「味噌餡を紅く染める」
「ニンジンの蜜漬けを使う」
「紅色の求肥を使って二枚重ねにする」
などなど、様々な手法が用いられています。
色々な花びら餅を買いそろえて、
食べ比べてみるのも面白いかもしれませんね。